2月定例能
2月定例能
日時
2月7日(日) 午後1時開演(正午開場)
会場
石川県立能楽堂(金沢市石引4丁目18-3)
入場券
前売り一般 2,500円/当日 3,000円
若者割※(30歳未満・当日のみ) 1,000円 ※受付にて年齢を確認できるものをご提示ください。
中学生以下 無料
- 番組表
- 解説
【能】蟻通(ありどおし)
延喜当代きっての歌人紀貫之(きのつらゆき)(ワキ)と従者(ワキツレ)が、和歌の神々を祀る住吉・玉津島(衣通姫(そとおりひめ))への参詣を思い立ち、紀州路に赴きます。途中俄(にわか)に日が暮れて大雨が降り、乗っていた馬が道に伏してしまいます。そこへ傘をさし松明(たいまつ)を振る宮人らしい老人(シテ)が現れ、その光で貫之が目をこらすと、あたりは蟻通の明神(現泉佐野市)の社壇も近く、老人の下馬の咎めも当然のことです。恐縮した貫之は老人の勧めに従い、和歌を詠んで神の心を静めようとします。その詠歌を老人は喜び、貫之の邪心のなさを神が受け入れた証拠に、馬が立ち上がり歩き出しました。感動した貫之に依頼されて、老人は祝詞(のりと)を挙げ、神慮をすずしめる和歌の徳や岩戸神楽のいにしえを思って立ち回ります。貫之の心と言葉は神に納受されて、蟻通の明神が化現(けげん)したのです。そう述べて、老人は鳥居の笠木(かさぎ)に隠れるように姿を消しました。名残の神楽も夜は明けて、貫之は再び旅を続けます。
【狂言】節分(せつぶん)
節分の夜には鰯の頭を刺した柊の枝を門口に置き、鬼を打つ豆を撒きます。その豆を拾って噛もうと、遙々蓬莱の島から来た鬼が、女の家を覗き見て、したたかに柊で目を突きます。出てきた女に食べ物を乞ううち、その美しさに心奪われ、蓬莱の島で流行る小歌を種々に聞かせては、女の気を引こうとしますが、相手にされず泣き出してしまいます。あげくは隠れ蓑・隠れ笠、打ち出の小槌まで騙し取られて、豆を撒かれて追い払われます。
【能】俊成忠度(しゅんぜいただのり)
都落ちする平家の公達(きんだち)にはそれぞれの別れがあって、薩摩の守忠度の場合は歌道の師藤原俊成に自作を託し、勅撰集への入集を依頼する場面が有名です。それから半年後、一ノ谷で忠度を討ち取った岡部の六弥太忠澄(ワキ)が俊成(ツレ)邸を訪れます。忠度最期の短冊(たんじやく)を俊成に見せ、岡部なりの供養を思い立ったのでしょう。
短冊には「行き暮れて」の辞世が記されてありました。俊成が忠度の文武の功を偲び成仏を祈る目の前に、半年前と同じ(つまり平家物語に引く)「前途程遠し」の句を今度も口ずさんで、忠度の亡霊(シテ)が現れます。忠度は千載集への入集に感謝しつつも、朝敵の名を憚(はばか)って作者不詳とされた無念を述べ、ついで古今集仮名序に説く和歌の徳やその起こりに思いを巡らします。そこへ修羅の苦患(くげん)が襲い、忠度は帝釈天と激戦して苛酷(かこく)な責めを受けますが、入集歌である「さざ波や」の歌徳に救われ、暗闇となり明け方となって亡霊は木隠れに失せます。
(西村聡)